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朝焼けの光を纏い、アラが静かに剣を構えた。
「さ、始めようか」
言って、両剣を構えるアラに対して、俺は稽古用の刃引きした単剣をだらりと構える。
アラが深く呼吸を整え、こちらの隙を窺う。
「はっあああああああっ!!!」
朝の静寂を打ち破る咆哮を上げ、地を蹴って跳躍するアラ。
太陽の逆光を利用してきたと言うわけか。

シャィイィンッ

上空からの一撃を俺を剣を滑らせるように受け流す。
着地の体勢から間髪いれずに足元を薙ぐアラバスターの左剣が虚空を斬った。
残念、俺はすでに半歩だけ後ろに下がっていた。
「くっ!?」
そのまま遠心力を利用して体勢を起こしながら右剣の斬撃
だが俺は片手で難なくそれを捌き、剣を軽く捻って弾く。
アラの片手から剣が零れ落ち、地面へと突き刺さる。
「っ!?」
一瞬、落ちた剣に目が行ったのが運の尽き。
「は~い、そこまで~」
何時の間にか見ていたルティさんが、タオルをアラに投げた。
「ちぇっ、姉さん見てたのか・・・」
ぶつぶつ言いながら汗を拭くアラにルティさんが三本指を立てた。
「今のやりとりで、あんた三回斬られてるわよ」
「最初に剣を捌かれた時、着地としてからの左剣、最後の剣を落とした時だろ?わかってるよっ!」
言ってタオルを投げ返して、俺に礼を告げると、ギルド内にある稽古場の方に元気良く走り去っていった。
「ははっ、若いっていいねぇ、うんうん」
「な~に年寄りくさいこといってるのよ、それよりアラはどう?」
「あ?別に心配ないんじゃね?」
どうもアラが人より剣の上達が遅い事をルティさんは心配してるみたいだけど
「あいつは良くも悪くもルティさんの影響を受け過ぎてるのさ」
「へ?あたしの?」
裏返った声で自分を指差してきょとんっとしてるルティさんも可愛いな・・・。
「アラは考え過ぎなんだよ、魔道のように剣を理論で理解しようとしてるのさ」
「それはあたしとしてはちょっと複雑ね・・・あたしのせいもあるのかな・・・・」
そう言うルティさんの肩をぽんっと叩いて
「どこの姉弟も上には影響されるもんだよ、さ、それより朝ご飯まだでしょ?一緒に食べよ」
「あ、うん・・・てっ!!!!」
一緒に歩き出したルティさんが何かを思い出したかのように声を上げて立ち止まった。
「そんな場合じゃなかった!!ローソンなにしたの!?」
「はっ?」
慌てたルティさんがポケットから1通の封筒を俺に差し出した。
それはギルド内での重要通達事項がある場合に出されるマスター用の特別な封筒だった。
だいたい、ギルド全体に通達されるものなのだ。
しかも、すげぇ本当に重要な時に使用されるフォンさん用の封筒・・・・。
・・・今回は俺一人に・・・・あれ?やばい?
「え~っと・・・俺、なんかした?」
完全に俺の顔は引きつっていた。
「知らないわよ・・・・。」
つられてルティさんの顔もひきつる。
「と、とりあえず、読んでみる」
「う、うん」
封筒を破る手が震えているのは本能が警戒していたのかもしれない。
便箋には簡潔で無駄のない文字が一行だけ書かれていた。


――――すぐに来なさい――――


「な、なんて書いてあったの?」
「・・・・・・・・」
「ね、ねぇ」
「・・・・・・・・」
「ちょ、ちょっと、ローソンってばっ!」
「なんかしたっけえええええええええええええええ!!!!」
俺は奇声を上げながらダッシュでフォンさんの居るマスタールームへと向かった。
後ろでルティさんが俺の名を呼ぶ声がしたが、振り返る余裕なんて微塵もない。


――――  オオ・・・ ―――――

扉の前に立つと、静かで深海のように冷たい空気が俺を包んだ。
緊張しているのか、唾を飲み込もうとした口の中はカラカラに乾いている。
「・・・・ふぅ・・・」
俺は呼吸を整え意を決した。

コンコンッ


「どうぞ」
ノックから少し遅れてフォンさんの声が静かに響いた。
俺はもう一度乾いた喉をならして、扉をの先へと足を踏み入れた。

ザワッッ!

部屋に入ると、そこは何時もと変わらないマスタールームであった。
で、あったにも関わらず魔物が潜む密林に足を踏み入れたかのような悪寒がした。
扉を閉めて静かに書類を見ているフォンさんの前へと歩みでる。
目の前に居るのは何時ものフォンさんだが、違う。
「急な呼び出しでもうしわけありません」
書類からこちらに目を移す。
蛇に睨まれた蛙の気持ちがわかってきた・・・。
「ローソンにお聞きしたいことがあります。」
「・・・ハイ・・・」
俺は精一杯の声を上げたつもりだが、小声にしかならなかった。
「一昨日の夜から今日に掛けて、ギルドの冷蔵貯蔵庫に足を踏み入れましたか?」
「・・・冷蔵貯蔵庫ですか?」
確か生ものとかを保存したり、女性陣が冷えたお菓子とかを大事に保存したりする場所だったな・・・。
何度かルティさんに付き合って行った事はあるけど・・・。
「一昨日の夜から今日に掛けては足を踏み入れてはいません」
「その行動を保障できますか?」
「ルティさんとほぼ一緒にいたので、ルティさんに聞いていただければ大丈夫だと思いますが」
そう言うと、部屋に満ちていた殺気が幾分か薄くなるを感じた。
「わかりました。ではここから本題に入ります・・・」
そう言っ少し黙したフォンさんは、静かだが奥底に沈めた怒りを抑えるようにしているのが微かに伝わってくる。
俺はフォンさんの次の言葉を待った。
2秒、3秒くらいだったと思うが、物凄く長い沈黙に感じられた。


「・・・うちのプリン・・・」


「・・・・・・はっ?・・・」
聞き間違えだったのだろうか?今確かにフォンさんの口からプリンって言葉が出たような・・・。
「夢幻の港に半年から一年に一回しか来ない行商人が売っている限定20個のお一人様2個までのうちのプリンが!!!」
恐らく聞き間違いではない、確実にプリンと言っている。
「名前まで書いて冷蔵貯蔵庫に入れて置いたプリンが誰かに食べられたのよ!!!」
ああ・・・全てを俺は理解した。
でも、ここで「たががプリン」とか言った瞬間、俺はこの世から居なくなるな。
「・・・・犯人を捜せと?」
「ローソン、くれぐれも迅速かつ内密に頼みましたよ」
その笑顔の下にどれだけの怒りを隠しているのか想像もつかない。
「・・・・全てはマスターの意のままに」
俺は一礼してマスタールームを出た。
瞬間、全身の力が抜けて膝が地に落ちた。
緊張からくる汗で手も服もじっとりと濡れていた。

「・・・・・はぁ~・・・・」

俺はよろよろと立ち上がると、フォンさんの笑顔を浮かべながらふか~いため息をついた。

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コメント
一大事ですなw
それで、幹部会が行われていたんですね~w
【2007/11/16 12:49】 NAME[那樹ナジュ] WEBLINK[] EDIT[]
無題
真っ先に疑われるローソン、ワロスwwww
【2007/11/16 20:30】 NAME[ao] WEBLINK[] EDIT[]
無題
フォンさん……萌えwwwww
続きplz~!((“o(>ω<)o”))
【2007/11/17 02:40】 NAME[ルティルト] WEBLINK[] EDIT[]
うっひょ~ww
ローソンの文章は面白い~~ww
フォンさんに萌えww
犯人誰かな~~w。('-'。)(。'-')。ワクワク
【2007/11/23 23:12】 NAME[コンスタンツ] WEBLINK[] EDIT[]


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